第98回選手権大会優勝予想・反省文
作新学院、優勝おめでとうございます。
準々決勝後の勝利監督インタビュー。まるでチームの充実感が伝わってくるような自信に満ち溢れた小針監督の話しぶりが、まるでキラキラとあのゴールドのユニフォームよりも輝いて見えました。今思えば、優勝するチームの持つ陽性のエネルギーを思い切り発していた瞬間だったのでしょう。
横浜
結果論にはなってしまいますが、履正社戦ではやはり藤平を先発させて欲しかったなあ・・・と。
東西の横綱と目されていた2校が、初戦を叩いて力を存分に発揮できるタイミングで対戦が組まれた巡り合わせ。多数の徹夜組も出し、前年の清宮フィーバーを凌駕するほど超満員の観衆を集めた甲子園。結果がどちらに出ていたかに関わらず、堂々とエースを立ててまずはがっぷり四つの戦いを演出すべきだったかと思います。
真っ向勝負での分の悪さを察したのか、力より策に走ってしまったのか。甲子園初采配平田監督には今後の課題を付きつけられたような選択だったような気がします。
それにしても、あれだけの能力を備えた横浜打線が、一試合を通じて寺島を崩せる気がしませんでした。一方履正社には石川、藤平いずれが登板している時でも攻めていける雰囲気があった。選手起用の話は置いておいても、履正社の力が横浜を一段上回っていた印象でした。
ここ10年くらいの横浜には、悪い意味で“大人の野球”をしている雰囲気をいつも感じます。選手たちの能力や技術は溢れているのに、絶対に勝ち上がっていくという強い気持ちが前面に出てこない。洗練されていてスマートな野球がチームカラーとも言えるので、一概にそのスタイルを否定できませんが、ここしばらく突き抜けた結果を出せていないのはそういったところにも原因がある気がしてなりません。
今後、平田監督が横浜をどういうカラーに染めていくのか。これからのチーム作りに注目したいところです。
しかしずっと高校野球を見てきて、いくらタレントを揃えても甲子園では勝てないという教訓は何度も見てきましたが、また懲りずにその罠にはまってしまいました。猛省。
前橋育英
嘉手納戦。前半はじわじわ優位を築き完全に前橋育英ペース。しかし集中打を浴びた7回。先発の佐藤、救援した吉沢とも自分のペースをつかめず、平静さをかいた表情で嘉手納の勢いに一気に飲み込まれてしまいました。
また、惜しまれるのは5回裏の攻撃。小川が長打を放つも3塁でタッチアウトになった場面、1塁走者の本塁生還が遅れ、取れていたはずの1点を逃してしまいました。走塁の緩みで損ねた1点は、試合の流れを手放すこと以上に、ああいったプレーが徹底できてないのでは前橋育英の拠り所である「凡事徹底」に味噌をつけてしまう痛いプレーでした。甲子園で勝つ流れをつかむためには、ああいう一つ一つのプレーを大事にしなければいけません。
厳しい群馬大会を勝ち上がった勝負強さ、精神力に期待したい今大会の前橋育英でしたが、あまり良い所を発揮できずに姿を消したのは残念でした。
第98回選手権大会優勝予想
夏の甲子園で勝ち進む学校は大別すると2通りに分けられます。
一つは日頃の猛練習で徹底的に鍛えられたエリート集団たちが、圧倒的な野球力を発揮して押し切っていくパターン。優勝候補が期待通りに誰もが納得する結果を出して見せる、その夏最強のチームを決める甲子園の大王道と言えるでしょう。
もう一つは、単なる野球の実力だけでは収まらない何かしら特殊な力を纏ったチームが、甲子園を味方に付けることにより神がかり的な上昇力も得て勝ち上がっていくパターン。誰もに愛されるヒーローの存在、革命的な個性を持った野球スタイル、極限まで高められた精神力の強さ等がそういったチームの持つ特徴で、いわゆる記憶に残る学校として歴史に刻まれていく。これも甲子園の魅力たるもう一つの王道でしょう。
前者をA、後者をBとして、ここ10年の優勝校をいずれかのパターンに当てはめてみます。
第88回(2006年) 早稲田実 →B(ハンカチ王子)
第89回(2007年) 佐賀北 →B(がばい旋風)
第90回(2008年) 大阪桐蔭 →A
第91回(2009年) 中京大中京 →A
第92回(2010年) 興南 →B(沖縄勢夏初優勝)
第93回(2011年) 日大三 →A
第94回(2012年) 大阪桐蔭 →A
第95回(2013年) 前橋育英 →B(超攻撃的守備力)
第96回(2014年) 大阪桐蔭 →A
第97回(2015年) 東海大相模 →A
今年は例年にも増して好投手、強力打線を擁する実力校との評判の高い学校が目白押しの大会となりました。
普通に考えて優勝候補がそのまま実力を発揮して勝ち上がっていくのか、そんな実力校を押しのけて甲子園に新たな新風を起こすようなチームが現れるのか。どういう大会になるか楽しみに見守りましょう。
優勝予想
◎横浜
◯前橋育英
▲樟南
横浜
多くのタレントを揃えたスター軍団として優勝候補の中でも上位に目される横浜ですが、ここでも一番手として押します。
長きに渡って横浜の顔として存在していた渡辺監督が退き、平田監督の元新たなスタートを切った横浜。監督と選手との距離感が近いことでチームが実にのびのびと躍動している様子が伺え、昨年までの横浜とは少し違ったムードを感じます。心配された体制移行でしたが、スムーズにかつ効果的に行われ、プラスになったと判断します。平田監督の実戦不足を指摘する声もありますが、監督就任前に部長として渡辺前監督とベンチ入りしていた経験を少しでも活かせれば。
藤平を始めとした個々の力が目に付きますが、選手たちから浮ついた発言が聞かれないのが好印象。個々の活躍を求めるよりも東海大相模の後塵を拝してきたことに対する神奈川の盟主復権に向けて一つになっていることに期待したいところ。
チームを引っ張る公家主将の存在も好印象。力がありながら繋ぐバッティングに徹せれるプレースタイル、すでに六大学野球の主将のような貫禄は、ともすればバラバラになりがちなスター集団のまとめ役として実に適任。心なしか平田監督の主将だった頃とその存在感が重なるのも、何かの縁を感じさせます。
優勝するに足る力があるのは誰もが認めるところ。あとはがむしゃらに、愚直に自分たちの野球ができれば自然と結果が付いてくるでしょう。
前橋育英
実況近年充実著しい北関東勢は常総学院、作新学院、前橋育英とどのチームが上位進出しても全く不思議のない強力なラインナップ。こと投手力、攻撃力といった個々の要素に限ると常総学院、作新学院の方が能力上位かもしれませんが、チーム力の高さから推したいのが前橋育英。春季関東大会で前述の横浜を退けて優勝している実力校でもあります。
3年前に高橋光成を擁して優勝した時と同様、安定感のあるエース佐藤と鍛え上げられた守備力、大事な所で点が取れる勝負強い攻撃力で試合を作っていくという非常に堅実な野球スタイル。群馬大会でもロースコアの試合続きで決して派手な印象は無いものの、得点差の割には危なげのない試合運びをするという、ある意味横綱相撲のような総合力の高さを感じさせます。
派手さが無いとはいえ春の県大会6試合で8本塁打放っているように潜在的な長打力は備えており、甲子園で必ず乗り越えないといけない追い込まれた場面に一発で流れを変えるという力も持っています。
「凡事徹底」の荒井イズムで鍛え上げられた精神力も夏の戦いには大きな力。とにかく勝負強く負けにくいという実戦派チームが、華のある有力校相手にどういう戦いぶりを見せてくれるか楽しみです。
樟南
朝日新聞デジタルの「バーチャル高校野球」が近年充実し、以前に比べて地方大会の試合が沢山見られるようになりました。(来年からは甲子園の組み合わせ抽選会も中継してください!)
今夏、バーチャル高校野球の地方大会決勝戦を何試合か眺めた中で、一番ピンとくるものを感じたのが樟南でした。
往年のライバル鹿児島実との延長15回引き分け再試合も劇的でしたが、何よりもエース番号を背負うサウスポー浜屋が印象的でした。
サウスポー特有の三振が取れるキレのあるボールが魅力的なのはもちろん、一般のファンから人気の出そうなキリッとしたその顔立ちに、樟南史上最も甲子園に愛されたあのエース福岡を重ねて見てしまうのは私だけでしょうか。
樟南には二枚看板としてもう一人のサウスポー畠中という投手がおり、こちらも実に安定感のある好投手です。
投手を中心とした守りから野球を作っていく、そんな強い樟南の姿が久しぶりに甲子園で見られそうです。
甲子園練習での女子マネージャーの件について
毎年この季節になると普段は気にも留められない高校野球ネタが賑やかに取り上げられるようになります。いやあ、夏ですね。
さて先日話題になった女子マネージャーの件。危険だ、時代錯誤だと賛否あるのは分かりますが、明確な大会規定がある以上このような結果に収めたのは当然のことで、それ以上でもそれ以下でもありません。
この規定がおかしいと皆が感じれば、あとはこれを機会に見直しを図っていけば良いだけです。
それはさておき、このニュースで気になるのは守備練習が10分ほど経過したところで制止が入ったということ。
女子マネージャーが練習に参加できないことくらい大会関係者は周知だったはずで、あえてしばらく気付かぬふりをして10分間のご褒美をあげていたのだとしたら・・・。
頑固爺のように頭の固い高野連ですが、もしかしてこんな隠れたファインプレーを披露していたとしたらちょっと幸せな気分になりませんか。
第97回選手権大会優勝予想
今年は高校野球100年という節目の年だそうです。各種メディアも日々お祭りムードでその話題を大きく取り上げています。でも本当に盛り上がるべきは第100回記念大会なような気がしてならず(その時はその時でまた騒ぐのでしょうが)、若干の違和感を感じています。また、随分と早実や鳥羽が特別扱いされ過ぎるのも気になります(選手宣誓を指名したのは特に悪手だったかと)。こうした作られた空気とは裏腹に勝つべきところが当たり前に勝つ、そんな大会になりそうな予感がしています。
東海大相模
先発青島の替えどきを誤り、十分な戦力を持て余しながらも逆転負けしてしまった昨夏初戦の盛岡大附戦。観戦している我々ですら消化不良感はかなりのものだったわけで、当の門馬監督そして選手たちが持ち帰った悔しさは相当なものであろうことは言うに及びません。
今年の神奈川の主役は今夏限りでの勇退を宣言していた渡辺監督の横浜でした。しかし、決勝までドラマチックな勝ち上がりを見せたその横浜を寄せ付けることなく、最後まで気を許さず攻めきった東海大相模の姿勢には本物の強さを感じました。
渡辺監督に単に最後の甲子園を味わわせるのではなく、門馬監督に横浜がいたからこそここまで来れたのだと甲子園の優勝インタビューで言わせることで渡辺監督の有終の美を飾る、実はそんなストーリーになっていたようです。
初戦が盛岡大附と同じく東北勢の聖光学院と当たったのも好材料。難敵ですが昨夏の嫌な思いを払拭するには申し分のない相手です。
もう一つ注目すべきは、第92回大会決勝でボロボロにされた相手である興南も出場していること。早ければ3回戦で当たるかもしれない組み合わせに入っており、このリベンジを大きなステップとして駆け上がっていくイメージもあります。
攻守ともに昨年以上に整えられた戦力に、油断なくアグレッシブに攻め続ける気持ちが伴った今年の東海大相模、評判通り優勝への最有力と見ています。
興南
春夏連覇以来の出場となった興南。そのときのエース島袋と同じサウスポーのトルネード投法ということで注目されている比屋根投手ですが、決勝の動画を一目見たとき自分には島袋と全く違うタイプに見えました。
島袋はフォーム全体が硬いけど球に力がある感じの剛のピッチング。一方の比屋根は極端なインステップにも関わらずそれを補う柔らかさを感じるフォームから、しなやかなボールが安定してきます。甲子園で勝ち上がっていくイメージが浮かびやすい、すごく実践的なピッチャーだという印象を受けました。
名将我喜屋監督が今年のチームをして「この子たちを甲子園に連れて行かれなかったら監督の責任」と発言するほどのポテンシャルの高さも侮れません。
関東一
近年、甲子園に度々顔を出しながらも大きな見せ場を作れずに終わっている関東一。東東京大会では他校を寄せ付けず圧倒的な勝ち上がりを見せ、今年は勝負気配が漂います。
躍動感で観客の心をつかめる一番オコエの能力は本物。ワンプレーで一気に甲子園を味方につける可能性も十分。また、これでもかと出てくる多彩な顔ぶれの投手リレーも魅力で夏の連戦に力を発揮しそうです。
第96回選手権大会優勝予想・反省文
大阪桐蔭、優勝おめでとうございます。
中村主将が気迫で持っていったセンター前の飛球は、三重の長野主将が懸命に伸ばしたグラブの先に紙一重で落ち、優勝を決める一打となりました。距離にしてわずか数cmの差ですが、そこには甲子園の神様に認められた王者が持つちょっとやそっとでは超えられないの壁の高さを感じました。
試合終了〜校歌斉唱までは、これまでの決勝戦の歴史でも何本かの指に入るいいシーンでした。甲子園で優勝するチームには野球だけでなく、このように最後に満足して終われるようなエンディングを作り上げて欲しいものですね。
さて、優勝予想の反省文です。
優勝予想校について
1、2回戦を見ると本当のチーム力が徐々に見えてくるので、例年は優勝しそうなチームが大会前の優勝予想と違っていたことが分かってきます。
しかし今年に限っては、初戦の戦いぶりを見た時点でなお、健大高崎、日本文理の両チームに最も優勝の気配を感じていました。圧倒的な機動力という新しいスタイルで突き進む健大高崎の勢い、難敵を相手にしても受けて寄り切る横綱相撲を見せる日本文理、どちらも優勝まで到達する勢いを持っていました。結果的に優勝まではなりませんでしたが、予想としては大満足な内容です。
日本文理に一つ提言ですが、中京大中京戦であの追い上げムードを演出したチャンスマーチのリズムが今大会はだいぶ早くなっていました。日本文理が頂点を狙うにはあの空気を甲子園で再現する必要がありますし、ぜひそれを見てみたいとも思います。ぜひ戻して欲しいところです。
もう一校の東海大甲府については・・・いい所なしでしたね。東海大勢同士の刺激し合いで勝ち残るイメージも持っていたのですが、大将格の東海大相模も初戦敗退と流れが来てませんでしたね。
第86回センバツ高校野球大会優勝予想
もうすぐ第1試合が始まります。直前になって恐縮です。時間が無く情報もあまり仕入れてないので、とりあえずざっくり予想を上げておきます。
一人でも見てくれる方がいれば、ちゃんと更新しないといけませんね!反省。
優勝予想
◎横浜
近年、体調不良のニュースが聞かれることが少なくない渡辺監督。実は自分はここ数年、いつ引退発言が飛び出してしまうかとハラハラしながら伺っていました。これだけの高校野球の功労者、最後に結果を出してあげるのは甲子園の神様の務めでもあるでしょう。
高浜、浅間のスター選手に孫の佳明がスターティングラインナップに並んだ今年の世代。久々の頂点を獲るには絶好の機会と考えているはず。
松坂世代以降の横浜の戦いぶり、正直言って個人的には素質や洗練さだけが伝わり、優勝するチームに必要な熱っぽさにかけるカラーが気に入らないのですが、選手権の前哨戦センバツの舞台であればそれもギリギリ許されるかなと。
高野連の選考センスは侮れず、当落線上で拾われたチームが活躍するケースが多い印象も味方するでしょう。
追記
すみませんが、準備不足のためベスト8予想はお休みします。