第94回選手権大会優勝予想・反省文
決勝の組み合わせが決まった瞬間、2004年駒大苫小牧−済美の決勝戦がすぐに頭をよぎりました。
駒大苫小牧が勝てば大旗が初めて白河の関を超える、一方の済美が勝てば創部3年にしての春夏連覇。
甲子園の歴史上そう簡単に達成されて欲しくない記録のどちらかが必ず達成される状況が生まれ、非常に複雑な気持ちでした。
同じようなケースが実現してしまった以上は、せめてより納得の行く形で決まって欲しいと考えていました。
大阪桐蔭が勝つならば歴代春夏連覇校に相応しい強い勝ち方を見せてくれること、
光星学院が勝つのであれば東北勢の思いが伝わるような試合を見せてくれること・・・。
優勝するチームはそれに相応しいストーリーに沿って勝ち上がっていくものですが、決勝当日までは光星学院にその利があると見ていました。
- 今大会のハイライトでもあり、桐光学園の松井を攻略した準々決勝。
- その大一番で見違えるような勝負ピッチングを見せた金沢。
- 田村、北条、天久と強烈なインパクトを発した中軸の一発攻勢。
- レギュラー陣唯一の青森県人でもある金沢が決勝のマウンドに立つであろうローテーションの巡り(仲井監督にその意識はあったのでしょうか)。
また一方で大阪桐蔭の勝ち上がりが、光星学院に比べてあまりに坦々としていたこともそう考えさせられる要因でした。
しかし、決勝戦直前のインタビューで主将・田村が語った「勝っても負けても泣いてしまうと思います。なので勝って泣きます。」といった内容の発言に違和感を感じてしまいました。
泣こうと心構えして見るドラマに期待通りの感動は得られません。
悪い意味でここまで来たことで緊張が切れてしまったような、これからの試合に100%集中できていないような、そんな気がしました。
案の定その不安はそのまま試合に現れ、光星学院は絶好調藤浪の投球に為す術もなく、守備でも失点に絡むエラーで自滅してしまい、大阪桐蔭が終始ペースを握ったままの完勝で試合終了。
終わってみれば大阪桐蔭は強かった。
藤浪も春とは見違え、心身ともに逞しく感じました。
打線も上位から下位打線まで切れ目が無く、過去優勝するチームと重なる強さを持っていました。
センバツ優勝校だからという驕りは微塵も感じさせず、逆に皆が自信を持ってまとまるチームワークが伝わりました。
結局、納得行かないような気がしていたのは頭一つ抜け過ぎて印象で損をしてしまっただけなのでしょう。
思えば興南もそんな感じでしたから、もう春夏連覇というステータスは過剰に反応するレベルでは無くなったのかもしれません(少ないセンバツの84回に合わせたとして7校目だと約8%の割合で春夏連覇校誕生、想像していたより高い数字に思えますし)。
それに比べて、東北勢の優勝というのはとてつもなく重く価値のあるものだということを改めて実感しました。
光星学院は実力こそあれ、逆に言うとそれ以外の要素は足りなかった。
例えば、花巻東のような狂気、聖光学院のような真剣味、仙台育英のような矜持、21世紀枠の公立校が見せる熱狂。
甲子園は野球の強さだけで勝てる所ではありません。
まして、それが東北勢初の優勝校となるチームであれば尚更に。
光星学院の3季連続準優勝は、そんな非科学的な妄想を現実のものとして見せつけられたかのようでした。
Aブロック ×神村学園(◯光星学院)
神村でさえ完全に一蹴される、光星学院の上から目線野球が凄みを発揮。
神村学園の山本監督は、甲子園でもジャッジ経験がある元審判なのだとか。
そうであればもっと高校野球力を持ったチームを作れる気もするのですが、まだそういう印象がありませんね。
Bブロック ◯大阪桐蔭
大阪桐蔭は順当な結果。
大竹のキレのあるピッチング、ルールを熟知したドカベンプレー、スタンドを埋めた大応援団、済々黌の試合は面白かった。
やっぱり甲子園でこういう伝統校はよく映える。
Fブロック ×北大津(◯桐光学園)
松井は去年、今年の神奈川決勝だけ見たことがあって、それなりに打たれるイメージを持っていたので、これだけの無双ピッチングをするとは衝撃的でした。
エースを大事に使う傾向が目立つ中、最後まで松井で勝負をした野呂監督にも好印象。
北大津は悪くは無かったと思いますが組み合わせが実は良くなかったですかね。
甲子園での同地区対決は、たいてい格のままに試合が決まるイメージを持っています。近畿における兵庫と滋賀の対決ですから。