高校野球ブログ~KNOCKOUTMARCH!~

高校野球に関する戯言を綴ります。

大船渡はベストを尽くせたのか?岩手県大会決勝戦で感じた疑問。

岩手県大会決勝戦花巻東ー大船渡にて
岩手県大会決勝戦花巻東ー大船渡にて

第101回夏の選手権、岩手県大会。

母校である大船渡が、35年ぶりとなる悲願の甲子園出場を目指し決勝戦へと進出。

その相手は、今や岩手高校野球界の横綱格、2年連続の甲子園を目指す第一シードの花巻東

最高の舞台に、これ以上ない対戦カード。

これは歴史的な素晴らしい試合になるという期待と、高校野球好きとしてこの目に焼き付けたいという思いで居ても立ってもいられなくなり、入っていた予定を急遽変更し(とばっちりのみなさま申し訳ございませんでした・・・)、弾丸ツアーで群馬から岩手へと飛んできました。

しかしみなさんご存知の通り、その決勝戦は誰もが予想だにしない内容となり、その衝撃の大きさで生涯記憶に残るような試合となってしまいました。

岩手県営野球場を後にしてから今までの数日間、この試合で受けた晴れない気持ちがずっと消化しきれずにいたのですが、今の率直な気持ちを書き留めておくことにしました。

私が感じた疑問点

肩入れしていた大船渡が試合に負けたという結果はさておき、それ以前に、はたして大船渡はベストを尽くした戦いだったのか?選手たちはやり切ったと思える試合だったのだろうか?という釈然としない気持ちがどうしても抑えられません。

勝戦での佐々木投手登板回避について

まず疑問に思ったのは、なぜ決勝戦で佐々木朗希投手を登板させるローテーションを組めなかったのかという点。

国保監督は、大会前から佐々木投手に頼らない戦い方をすると明言されており、打っては4番も担う佐々木投手を準々決勝の対久慈戦では登板回避するだけでなく、試合に出場すらさせぬ徹底した体調管理を実行していました。

そんな中での、準決勝対一関工戦の9回完投勝利。

準決勝〜決勝が連日の日程であることは始めから分かっており、その上での準決勝に佐々木投手を投げさせたということは、最後は連投させる覚悟を決めた決断なんだなとてっきり自分は認識していました。

それが蓋を開けてみれば、決勝戦では故障予防のためとの登板回避。

始めからこうなる可能性も含んだ起用方針だったのならば、準決勝の方こそ温存し、実力上位と見られた花巻東との決勝戦に登板させて勝負をかける選択はあったと思います。結果論ではありますが、今回よりその方が甲子園の切符をつかむ可能性も高かったでしょう。

以前よりも複数投手制が当たり前のように浸透してきた昨今の高校野球事情はありますし、まして今年の大船渡に限っては投手起用に関するチーム方針が見えていた大会でもあったので、そのような割り切った投手起用もごく自然にできていたはずです。

野手佐々木としての起用について

4回戦・盛岡四戦での劇的な勝ち越しホームランも印象的だったように、4番を打ち、足も速い佐々木投手は野手としてもチームの中心的な存在。

その佐々木投手が野手としての出場もなかったことが、大船渡にとって戦力的にも精神的にもマイナスだったことは否めません。

投手としての登板はなくとも、なぜ野手として出場させなかったのでしょうか?

「守備があるとスローイングを100%で投げてしまう可能性もあるし、スイングも同じ。それならフルスイングできる(他の)野手の方が良いのかなという判断です」

https://www.nikkansports.com/baseball/highschool/news/201907250001248.html

報道ではこのような国保監督のコメントが紹介されていました。

確かに野手として出場すればスローイングやスイング以外にも、デッドボールだって受けるかもしれない、野手と接触してしまうかもしれない・・・怪我をする可能性のあるプレーは色々考えられます。

ただ、こうした可能性の話を言い出したらキリがなく、他の選手だって同じ条件でやっているのだし、そもそも野球をプレーすることができないレベルの非現実的な話になってしまうのではと思えて仕方がありません。

とあるメディアでは「心の負荷がかかる」という点も欠場の理由の一つだったと書かれていました。

地元の高校から甲子園出場することを目指して仲間たちみんなと汗を流してきた3年間の集大成、大船渡を応援する多くのみんなの期待を背に戦う大一番、これだけ大きな物を背負って試合をする経験は、彼ら選手たちにとってかけがえのない財産であり、今後の人生の糧になるものであるはずです。

出られるはずのその試合をベンチで見守ることが、はたして佐々木投手の「心の負荷」を和らげることになったんでしょうか。

勝戦での選手起用について

佐々木投手の扱い以外にも、決勝戦の選手起用には違和感を感じました。

先発は今大会初登板の技巧派・柴田投手。

これまでの実績から、立場的にはチーム4番手とも言える柴田投手の意表を付いた先発ともいえ、この試合は佐々木投手以外の継投でしのぐことに賭けた起用かと思われました。

しかし柴田投手は序盤からボール先行、投球に打線も合っている感じで苦しい立ち上がり。

そこに花巻東らしい足を使ってかき回す攻撃も交えられ、3回終了時点で花巻東4ー1大船渡。

早めの継投で悪い流れを断ち切りたいところに思えましたが、4回頃から大和田、和田の2投手がブルペンでアップを始めるも、まだ大船渡ベンチには動きなし。

佐々木投手が出場していないもやもやした雰囲気に加え、花巻東はエース西館投手が登板に向けてアップを始めており、これ以上点差が開いては勝負が喫してしまう空気も漂ってきます。

5回には、向久保選手のホームランが飛び出し花巻東5ー1大船渡。流れからしても、点差的にももう可能性を繋ぎ留めるギリギリの状況。ただ、大船渡ベンチは動かず。

5回裏、柴田投手に打順が回ったところでも、代打の動きはなし。

6回、花巻東に満塁から打者走者一掃の一打が飛び出し、大勢を決する4点が入る。花巻東9ー1大船渡。ここでも投手交代はなし。

7回から大船渡はようやく投手交代。マウンドに上がったのは久慈戦でも好投した大和田、和田両投手ではなく、またもや今大会初登板となる2年生左腕・前川投手。

しかし、その前川投手も緊張からか制球が定まらず、この回3つの四球を出すなど2失点。花巻東11ー1大船渡。

大船渡は最終回、意地の1点を返し花巻東12ー2大船渡としますが、最後の打者前川投手が倒れて試合終了。その前川投手に対して代打が送られることもなく、最後まで何か無抵抗ともいえる終わり方でした。

大船渡は花巻東を上回る11安打を放ったように、今大会の打撃の調子を維持しており、最悪4〜5点差までで付いていければ、後半ワンチャンスでビッグイニング作って空気を変えられる可能性はきっと残っている・・・と信じながら見ていましたが、着実に加点する花巻東の攻撃に対してあまりにも手立てが打たれない大船渡のベンチワークに歯がゆい思いでした。

  • 決して調子が良く見えなかった両投手の交代を早めて、少しでも失点を抑える努力は尽くせたのか。
  • 決勝の舞台に初登板で相当な緊張、重圧を抱えていたであろう両投手に、まったく伝令を送ることもなく孤立させてはいなかったか。
  • 今大会実績もあり、佐々木投手ほど登板回数も多くなかった大和田、和田投手を登板させなかったのはなぜなのか。
  • 替え時とも思われる投手の打順に代打を送る機会もあったが、それを見送ったのはどうしてなのか。

準決勝までネット観戦していた時はそこまで分かりませんでしたが、実際に観戦してみてとにかく国保監督は試合中に動かない監督なのだという印象を受けました。

攻撃前の円陣には加わらず、ベンチで選手に声をかけることもほとんどないですし、プレーに対する指示を出したり、チームを鼓舞するような仕草なども見かけません。

試合中ずっとベンチを見続けていたわけではないので、そもそも私の考え過ぎかもしれませんし、監督と選手たちが日頃培ってきた信頼関係の上に成り立ついつもの大船渡スタイルなのかもしれませんが、私には「動かない」姿勢がこの決勝戦に関しては「何もしない」采配に感じられてなりませんでした。

この大事な試合、1点でも、1プレーでも、勝利に近づくためにやるべきことはできていたのでしょうか?

特定の場面だけというならまだしも、私には一試合を通じて、そういった勝つための執念を大船渡の采配から感じ取れなかったことが、本当に残念でなりませんでした。

大船渡はベストを尽くした戦いができたのか

佐々木投手を決勝戦で登板させなかった国保監督の判断に対して世間では賛否の議論が挙がっています。

しかし、私が抱いた違和感は投げさせたかどうかの話ではなく、どうしてこんなにも消化不良な戦い方になってしまったのか・・・ということに尽きます。

前述の全ての疑問は、チームが出せる力を存分に発揮することなく戦い終えてしまったと感じた点です。

甲子園を目指してこれまで取り組んできた選手たちは、はたして完全燃焼して最後の試合を終えることができたでしょうか?

私があの試合を見ている限り、どうしてもそのようには思えなかったのです。

この決勝戦の後、大船渡高校に苦情の電話が殺到というニュースを数多く目にしました。

そういった行為は恥ずべきことでもちろんすべきではありませんが、地元の方々がこの試合結果をそこまで残念に思う気持ちはとても分かる気がします。

私たち大船渡に縁のある人間にとって、単に佐々木投手が甲子園で投げる姿を見たかったわけではなく、ダイコー(地元では大高=ダイコーと呼ばれます)が久しぶりに甲子園で活躍する勇姿を見たかったのです。

それが、ああいう終わり方ではあまりに寂しくて・・・。

おわりに

ここで書いたことは私だけの穿った見方かもしれませんし、事実はまったく別のところにあるのかもしれません。外野からの推測である以上、間違った内容で嫌な思いをさせてしまうことも書かれているかもしれません。

それでも、私はあの試合を国保監督が佐々木投手を守ったという美談で済ませるには、あまりに納得行かないことが多く、今の率直な気持ちを残させてもらいました。

最後になりますが、大船渡の選手のみなさん本当にお疲れさまでした。地元から甲子園を目指そうという素晴らしい戦いぶりの連続には、本当に良いものを見せてもらいました。一卒業生として、とても誇らしかったです!

そして、優勝した花巻東のみなさんおめでとうございます。気持ちも鍛えもしっかり入ったさすが花巻東らしい好チームで、甲子園でもその活躍を願ってやみません。岩手から日本一を目指して頑張ってください!