高校野球ブログ~KNOCKOUTMARCH!~

高校野球に関する戯言を綴ります。

第101回選手権大会で印象に残った試合

まだ録画だけして見られていない試合も多くありますが、見応えのある熱戦がとても多かった大会だったように思います。

個人的に特に印象に残っている試合をいくつか挙げてみます。

星稜ー智弁和歌山

智弁和歌山 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1
星稜 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3x 4

チーム状態が MAX に高まる3回戦での対戦、注目カードにお盆休み中の土曜日第2試合ということもあり朝から満員通知が出るほど大観衆の甲子園球場、様々な条件が整う中で実現した、今大会No1投手奥川と高校野球界の打の象徴・智弁和歌山との大一番。

優勝候補同士と言われる対戦では、ともすれば大味な試合に終わってしまうケースがよくありますが、誰もが期待する以上にお互いの力が噛み合った素晴らしい試合でした。

特にしびれたのがタイブレークに入った13回から。ここまで続いてきた緊張感ある投手戦の流れがタイブレークによって壊されてしまうかと思いきや、お互いに先頭打者が試みる送りバントを猛チャージのディフェンスで3塁封殺すること3度。鍛え抜かれた守備力に、1点もやるまいとする集中力、積極的なプレーを発揮できる精神力…。点が入る余地を微塵も感じさせない張り詰めた空気にしびれました。

国学院久我山前橋育英

国学院久我山 0 0 2 0 0 1 3 1 0 7
前橋育英 1 1 0 0 2 1 0 0 0 5

拮抗した好ゲームになる予感はあったものの、最後にはディフェンス力や試合運びの巧さに勝る前橋育英が勝つのではと予想していたこの試合。その予想を見事に覆される国学院久我山の見事な逆転劇でした。

西東京大会から接戦を勝ち抜いてきた勢いをそのまま発揮した終盤の集中打、そしてチャンステーマ『一本』に乗ってその攻撃を激しく後押しする大声援。グラウンドとスタンドが一体になって爆発する国学院久我山の姿に、試合が終わる頃にはすっかり心を持っていかれました。

息をつかせぬシーソーゲーム、魅力的な応援曲、大声援の盛り上がり。試合が一つの作品として結実したナイスゲームでした。

あまりに『一本』が頭から離れないせいで、甲子園が終わってからもこの試合を始め、敦賀気比戦や創価戦(西東京大会決勝戦)の録画ばかりを見返しているこの頃です…。

明石商ー宇部鴻城

宇部鴻城 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2
明石商 0 0 0 0 1 0 0 1 0 1x 2

相手を丸裸にする徹底したチーム分析、細かなベンチワーク、取材での歯に衣着せぬ発言、試合中の熱血アクション、とみなぎる個性ですっかりブレイクした感のある狭間監督。

狭間監督の采配とそれに応える選手たちの信頼関係がチーム力の源になっているような明石商野球は、選手の自主性を引き出す野球がよしとされる傾向にある昨今の中で、とても魅力的に見えます。

「うちは点を取るための全ての引き出しを持っている」(試合後の狭間監督インタビューより)。8回裏1死3塁からヒットエンドランでもぎ取った同点劇、10回裏のサヨナラスクイズ、とここぞの場面で力がいかんなく発揮された会心のゲームでした。

出てくる度に開会式で一番元気の良い入場行進を見せてくれる宇部鴻城、こういうチームが良い試合を見せてくれると余計に嬉しくなるものです。

第101回選手権大会決勝戦履正社ー星稜の雑感

履正社、初優勝おめでとうございます。

大きな追風に乗る星稜の勢いを止めるのは難しいとにらんでいましたが、それを上回る履正社の破壊力たるや恐るべしでした。

失投を見逃さずピンポン玉のようにスタンドインさせた四番井上の3ランは圧巻でしたが、どんな球種も初球打ちでとらえてみせた桃谷、バッテリーに投げる球を無くさせて仕留めた内倉など・・・、上位から下位まで気の休まるところのない見事な打線でした。

何でも、大会を通じて盗塁ゼロでの優勝校は史上初だったのだそう。関東第一や明石商といったスモールベースボールを得意とする難敵を、力でねじ伏せてきたところからもその一端が伺えた気がします。

こちらは直近10年の決勝戦のスコアです。

あと一歩のところまでは勝ち上がれても、最後頂点を獲るには突出した攻撃力が備わっていないと難しい。そんな傾向が年々強まっている気がします。

今後もそういった流れは続いていくのか、それを覆すようなカラーのチームが優勝することはあるのでしょうか。

さて、今大会最も注目を浴びたチームとも言える星稜。

いい状態で決勝マウンドに登ると思われた奥川投手も、いざ投げてみたら制球も球威も万全とは言えないできでした。激戦と猛暑で蓄積された疲労は予想以上だったのでしょう。

奥川の調子は上がらず、また試合を通じて走塁ミス、送球ミス、判断ミス・・・と度々の失策を重ね、ともすればワンサイドゲームになってもおかしくない流れでしたが、履正社を上回る13安打を放ち、球場を支配する大応援の後押しも受けて、7回には3-3の同点に追いつく展開に。

しかし追いついた矢先の8回、履正社に2点挙げて突き放されたのはとても痛かった。(さらに言うと、この回先頭打者の内倉が粘りに粘って放った二塁打のダメージが大きかった。)

結果論にはなりますが、この回奥川を思い切って継投させていたら、また違う試合になっていたようにも思います。履正社エース清水から岩崎にスパッと継投したのとは対照的でした。

24年前に続き決勝で惜しくも敗れてしまった星稜。大先輩である松井秀喜の「でも、ここで優勝できないのが、星稜。母校のそういうところも大好きです」という言葉には、愛情とともに大事な課題が隠されているように思えます。

vk.sportsbull.jp

それにしても見どころが多く、応援の盛り上がりも素晴らしく、とても見応えのある決勝戦でした。

履正社、星稜のみなさんお疲れさまでした。

第101回選手権大会決勝戦の勝利予想

先日8/20、U18ベースボールワールドカップに参加する高校日本代表選手20人が発表されました。

www.japan-baseball.jp

しかし、なぜにこのタイミングでの発表だったのでしょうか。せめて決勝戦が終わるまでは待てなかったんでしょうか?

星稜からは奥川、山瀬の二人が選出され、履正社からは誰も選ばれませんでした。

選ばれた者、選ばれなかった者、両チームの選手たちはこのニュースを見て何を思ったでしょうか。

余計な話題に心を乱されることなく、全員が決勝戦に集中して臨めることを願います。

勝戦予想

優勝は星稜と予想します。

とにかく、今大会における奥川の仕上がりが万全です。

甲子園に出てきた投手からよく聞くコメントで、適度に疲労がある2〜3戦目くらいが体の力が抜けて良い投球ができた、というものがあります。

準々決勝は休養、準決勝も力を抑えた省エネ投球と、ちょうどよいローテーションで迎えた決勝では万全のピッチングを見せることでしょう。

チームの勢いや持っている明るい雰囲気も星稜に流れがあり、地元大阪のチームを相手にしながら、スタンドからそれ以上の声援を受けることも十分考えられます。この後押しは、星稜優勝へ向けさらなる大きな力となります。

今大会、他チームと一つレベルの違う破壊力を見せる履正社打線は確かに脅威です。センバツ一回戦で敗れた雪辱に燃えている点も侮れません。

しかし、智弁和歌山戦に近い投球すら予感させる今の奥川相手には、さすがの履正社でも何とか3〜4点くらい奪えるかどうかというところ。

おそらく履正社エース清水を立ててくるでしょうが、好調な星稜打線を相手に失点をそこまで抑えるのは厳しそう。立命館宇治、中京学院中京と、星稜はサウスポーとの対戦を経験しているのもプラス材料です。

もし、履正社が勝つとしたら打ち勝つのではなく、智弁和歌山戦のようなロースコアの接戦になるようなイメージを持っていますが、決勝戦にそういう緊迫したゲームを見られるならそれはそれで楽しみです。

夏の高校野球を締めくくる、大会一の投手と大会一の打線が激突する決勝戦。素晴らしいゲームになることを期待しています。

第101回選手権大会準決勝の勝利予想

準々決勝の予想は1試合しか当たりませんでしたが、ここまでくると実力拮抗したチーム同士の戦いが続いており、正直自信度もほとんどない予想ですのでご容赦を…。

さて、懲りずに準決勝の予想です。

履正社ー明石商

今大会冴え渡る狭間監督の采配ですが、最後に相手より一点勝ってればいいと徹底したゲームプランを遂行してみせた八戸学院光星戦はこれまた見事でした。

中森登板をギリギリまで我慢することで目一杯の投球を引き出し、一点のリードを見事に守りきる。監督が100人いたら99人がもっと早く中森に継投させていたのではないでしょうか。

個人的な評価軸になりますが、甲子園の上位で同地区対戦になる場合は格上校が有利という持論があります。今年のチームでいえば、秋季近畿大会で準優勝、センバツでベスト4の実績がある明石商をやや上と見ています(履正社は秋季近畿大会ベスト4、センバツは初戦敗退)。

試合巧者の関東第一を力づくでどっしり寄り切った戦いぶりには恐るべきものを感じさせられましたが、大阪大会でも何試合かあったように、大型チームゆえにふとエアポケットにはまる展開が十分ありえるでしょう。まして、隣県のチームをよく知る相手だけに研究しつくされている可能性も考えられます。

明石商は満を持して中森と思いきや、準々決勝と同じような順でもう少しタイミング早めの継投をしてくる気がしているんですが、その場合いかにいい形で中森まで繋げるか、その策にも注目したいところです。

明石商の勝ちを予想しておきます。

中京学院中京ー星稜

智弁和歌山戦の反動が心配されたのもどこ吹く風とばかりに、エース奥川を温存(とこでブルペンで投げさせていたのは全く余計だったのでは…)、当たりの少なかった主軸を含めて打線好転、甲子園初先発の今井起用が当たって大活躍、とこれ以上ない準々決勝の戦いを見せた星稜。

激闘を乗り越えて完全に上昇気流に乗った感があり、甲子園の神様が今年は星稜・奥川に微笑み始めた気配すら感じさせる内容でした。

特に夏の甲子園大会で言えることですが、技術や能力云々ではなく、言葉では説明のつかないこのような推進力に乗ったチームは強い。

中京学院中京は、総力を尽くした柔軟な継投で試合の流れを呼び込む橋本監督の采配、神がかった終盤力も驚異ではありますが、まだ余力十分の奥川相手にあのレベルの攻撃を再現するのはかなり厳しい印象です。

ここは星稜が勝利するのではと考えます。

第101回選手権大会準々決勝の勝利予想

今回も優勝予想はすっぽかしてしまいました。すみません。

途中参加のようで恐縮ですが、本日の準々決勝勝利予想をしてみたいと思います。

明石商-八戸学院光星

昨夏も対戦し、熱戦の末八戸学院光星が勝利。両チームの充実ぶりが著しく、今年も好ゲーム必死の注目カード。

万全を期して登板するであろう明石商エース中森と八戸学院光星打線の対決になりますが、今の光星打線を完全に抑えきれるのは智弁和歌山戦の奥川クラスの投手でないと厳しく、4〜5点程度の失点は想定しないといけないのでは。

となると、勝負は明石商がそれを上回る大量点を奪えるか。狭間監督の采配は冴え渡っていますが、爆発力という点でちょっと物足りない点があり、やや光星に分があるとみます。

ただ、心情的にはこれぞ高校野球という野球を見せる今年の明石商には特に心を奪われており、ここ一番の底力を見せてくれることを期待してますが…。

中京学院大中京作新学院

ともに試合を重ねる毎に勢いを増しているチーム同士で、大変予想が難しい一戦。

お互いビックイニングを作れる爆発力もあり、どこでどういう試合に転んでもおかしくありませんが、バラエティ・質に富んだ複数投手陣でやや勝るとみる中京学院大中京を予想しておきます。

星稜-仙台育英

劇的な智弁和歌山戦を乗り越えた星稜ですが、翌日の試合でもあり怖いのはその反動です。

おそらく奥川先発は回避することが想定され仙台育英打線にある程度つかまる覚悟は必要ですが、そうなると星稜の課題である得点力の物足りなさがどうしても出てきます。

あまり目立たないながらも、試合巧者ぶりを発揮する仙台育英が前評判を覆すのではないかという予想です。

履正社-関東第一

スケールの大きい野球を展開する履正社に、攻守・巧打・機動力と見ていてワクワクする野球を見せる関東第一という面白い一戦ですが、よりチームとして上昇気流に乗っている関東第一の勢いを買いたいと思います。

試合は点の取り合いになりそうなイメージですが、履正社清水投手のどこかで荒れそうなピッチングに不安を感じる一方、今大会の土屋投手の安定感ぶりが頼もしいところがあり、その差が点差になるかもしれません。

それにしても全体的に今大会は拮抗した好ゲームがとても多い印象。3回戦などは見どころの多い試合の連続でした。準々決勝も素晴らしい試合を期待しましょう。

大船渡はベストを尽くせたのか?岩手県大会決勝戦で感じた疑問。

岩手県大会決勝戦花巻東ー大船渡にて
岩手県大会決勝戦花巻東ー大船渡にて

第101回夏の選手権、岩手県大会。

母校である大船渡が、35年ぶりとなる悲願の甲子園出場を目指し決勝戦へと進出。

その相手は、今や岩手高校野球界の横綱格、2年連続の甲子園を目指す第一シードの花巻東

最高の舞台に、これ以上ない対戦カード。

これは歴史的な素晴らしい試合になるという期待と、高校野球好きとしてこの目に焼き付けたいという思いで居ても立ってもいられなくなり、入っていた予定を急遽変更し(とばっちりのみなさま申し訳ございませんでした・・・)、弾丸ツアーで群馬から岩手へと飛んできました。

しかしみなさんご存知の通り、その決勝戦は誰もが予想だにしない内容となり、その衝撃の大きさで生涯記憶に残るような試合となってしまいました。

岩手県営野球場を後にしてから今までの数日間、この試合で受けた晴れない気持ちがずっと消化しきれずにいたのですが、今の率直な気持ちを書き留めておくことにしました。

私が感じた疑問点

肩入れしていた大船渡が試合に負けたという結果はさておき、それ以前に、はたして大船渡はベストを尽くした戦いだったのか?選手たちはやり切ったと思える試合だったのだろうか?という釈然としない気持ちがどうしても抑えられません。

勝戦での佐々木投手登板回避について

まず疑問に思ったのは、なぜ決勝戦で佐々木朗希投手を登板させるローテーションを組めなかったのかという点。

国保監督は、大会前から佐々木投手に頼らない戦い方をすると明言されており、打っては4番も担う佐々木投手を準々決勝の対久慈戦では登板回避するだけでなく、試合に出場すらさせぬ徹底した体調管理を実行していました。

そんな中での、準決勝対一関工戦の9回完投勝利。

準決勝〜決勝が連日の日程であることは始めから分かっており、その上での準決勝に佐々木投手を投げさせたということは、最後は連投させる覚悟を決めた決断なんだなとてっきり自分は認識していました。

それが蓋を開けてみれば、決勝戦では故障予防のためとの登板回避。

始めからこうなる可能性も含んだ起用方針だったのならば、準決勝の方こそ温存し、実力上位と見られた花巻東との決勝戦に登板させて勝負をかける選択はあったと思います。結果論ではありますが、今回よりその方が甲子園の切符をつかむ可能性も高かったでしょう。

以前よりも複数投手制が当たり前のように浸透してきた昨今の高校野球事情はありますし、まして今年の大船渡に限っては投手起用に関するチーム方針が見えていた大会でもあったので、そのような割り切った投手起用もごく自然にできていたはずです。

野手佐々木としての起用について

4回戦・盛岡四戦での劇的な勝ち越しホームランも印象的だったように、4番を打ち、足も速い佐々木投手は野手としてもチームの中心的な存在。

その佐々木投手が野手としての出場もなかったことが、大船渡にとって戦力的にも精神的にもマイナスだったことは否めません。

投手としての登板はなくとも、なぜ野手として出場させなかったのでしょうか?

「守備があるとスローイングを100%で投げてしまう可能性もあるし、スイングも同じ。それならフルスイングできる(他の)野手の方が良いのかなという判断です」

https://www.nikkansports.com/baseball/highschool/news/201907250001248.html

報道ではこのような国保監督のコメントが紹介されていました。

確かに野手として出場すればスローイングやスイング以外にも、デッドボールだって受けるかもしれない、野手と接触してしまうかもしれない・・・怪我をする可能性のあるプレーは色々考えられます。

ただ、こうした可能性の話を言い出したらキリがなく、他の選手だって同じ条件でやっているのだし、そもそも野球をプレーすることができないレベルの非現実的な話になってしまうのではと思えて仕方がありません。

とあるメディアでは「心の負荷がかかる」という点も欠場の理由の一つだったと書かれていました。

地元の高校から甲子園出場することを目指して仲間たちみんなと汗を流してきた3年間の集大成、大船渡を応援する多くのみんなの期待を背に戦う大一番、これだけ大きな物を背負って試合をする経験は、彼ら選手たちにとってかけがえのない財産であり、今後の人生の糧になるものであるはずです。

出られるはずのその試合をベンチで見守ることが、はたして佐々木投手の「心の負荷」を和らげることになったんでしょうか。

勝戦での選手起用について

佐々木投手の扱い以外にも、決勝戦の選手起用には違和感を感じました。

先発は今大会初登板の技巧派・柴田投手。

これまでの実績から、立場的にはチーム4番手とも言える柴田投手の意表を付いた先発ともいえ、この試合は佐々木投手以外の継投でしのぐことに賭けた起用かと思われました。

しかし柴田投手は序盤からボール先行、投球に打線も合っている感じで苦しい立ち上がり。

そこに花巻東らしい足を使ってかき回す攻撃も交えられ、3回終了時点で花巻東4ー1大船渡。

早めの継投で悪い流れを断ち切りたいところに思えましたが、4回頃から大和田、和田の2投手がブルペンでアップを始めるも、まだ大船渡ベンチには動きなし。

佐々木投手が出場していないもやもやした雰囲気に加え、花巻東はエース西館投手が登板に向けてアップを始めており、これ以上点差が開いては勝負が喫してしまう空気も漂ってきます。

5回には、向久保選手のホームランが飛び出し花巻東5ー1大船渡。流れからしても、点差的にももう可能性を繋ぎ留めるギリギリの状況。ただ、大船渡ベンチは動かず。

5回裏、柴田投手に打順が回ったところでも、代打の動きはなし。

6回、花巻東に満塁から打者走者一掃の一打が飛び出し、大勢を決する4点が入る。花巻東9ー1大船渡。ここでも投手交代はなし。

7回から大船渡はようやく投手交代。マウンドに上がったのは久慈戦でも好投した大和田、和田両投手ではなく、またもや今大会初登板となる2年生左腕・前川投手。

しかし、その前川投手も緊張からか制球が定まらず、この回3つの四球を出すなど2失点。花巻東11ー1大船渡。

大船渡は最終回、意地の1点を返し花巻東12ー2大船渡としますが、最後の打者前川投手が倒れて試合終了。その前川投手に対して代打が送られることもなく、最後まで何か無抵抗ともいえる終わり方でした。

大船渡は花巻東を上回る11安打を放ったように、今大会の打撃の調子を維持しており、最悪4〜5点差までで付いていければ、後半ワンチャンスでビッグイニング作って空気を変えられる可能性はきっと残っている・・・と信じながら見ていましたが、着実に加点する花巻東の攻撃に対してあまりにも手立てが打たれない大船渡のベンチワークに歯がゆい思いでした。

  • 決して調子が良く見えなかった両投手の交代を早めて、少しでも失点を抑える努力は尽くせたのか。
  • 決勝の舞台に初登板で相当な緊張、重圧を抱えていたであろう両投手に、まったく伝令を送ることもなく孤立させてはいなかったか。
  • 今大会実績もあり、佐々木投手ほど登板回数も多くなかった大和田、和田投手を登板させなかったのはなぜなのか。
  • 替え時とも思われる投手の打順に代打を送る機会もあったが、それを見送ったのはどうしてなのか。

準決勝までネット観戦していた時はそこまで分かりませんでしたが、実際に観戦してみてとにかく国保監督は試合中に動かない監督なのだという印象を受けました。

攻撃前の円陣には加わらず、ベンチで選手に声をかけることもほとんどないですし、プレーに対する指示を出したり、チームを鼓舞するような仕草なども見かけません。

試合中ずっとベンチを見続けていたわけではないので、そもそも私の考え過ぎかもしれませんし、監督と選手たちが日頃培ってきた信頼関係の上に成り立ついつもの大船渡スタイルなのかもしれませんが、私には「動かない」姿勢がこの決勝戦に関しては「何もしない」采配に感じられてなりませんでした。

この大事な試合、1点でも、1プレーでも、勝利に近づくためにやるべきことはできていたのでしょうか?

特定の場面だけというならまだしも、私には一試合を通じて、そういった勝つための執念を大船渡の采配から感じ取れなかったことが、本当に残念でなりませんでした。

大船渡はベストを尽くした戦いができたのか

佐々木投手を決勝戦で登板させなかった国保監督の判断に対して世間では賛否の議論が挙がっています。

しかし、私が抱いた違和感は投げさせたかどうかの話ではなく、どうしてこんなにも消化不良な戦い方になってしまったのか・・・ということに尽きます。

前述の全ての疑問は、チームが出せる力を存分に発揮することなく戦い終えてしまったと感じた点です。

甲子園を目指してこれまで取り組んできた選手たちは、はたして完全燃焼して最後の試合を終えることができたでしょうか?

私があの試合を見ている限り、どうしてもそのようには思えなかったのです。

この決勝戦の後、大船渡高校に苦情の電話が殺到というニュースを数多く目にしました。

そういった行為は恥ずべきことでもちろんすべきではありませんが、地元の方々がこの試合結果をそこまで残念に思う気持ちはとても分かる気がします。

私たち大船渡に縁のある人間にとって、単に佐々木投手が甲子園で投げる姿を見たかったわけではなく、ダイコー(地元では大高=ダイコーと呼ばれます)が久しぶりに甲子園で活躍する勇姿を見たかったのです。

それが、ああいう終わり方ではあまりに寂しくて・・・。

おわりに

ここで書いたことは私だけの穿った見方かもしれませんし、事実はまったく別のところにあるのかもしれません。外野からの推測である以上、間違った内容で嫌な思いをさせてしまうことも書かれているかもしれません。

それでも、私はあの試合を国保監督が佐々木投手を守ったという美談で済ませるには、あまりに納得行かないことが多く、今の率直な気持ちを残させてもらいました。

最後になりますが、大船渡の選手のみなさん本当にお疲れさまでした。地元から甲子園を目指そうという素晴らしい戦いぶりの連続には、本当に良いものを見せてもらいました。一卒業生として、とても誇らしかったです!

そして、優勝した花巻東のみなさんおめでとうございます。気持ちも鍛えもしっかり入ったさすが花巻東らしい好チームで、甲子園でもその活躍を願ってやみません。岩手から日本一を目指して頑張ってください!

第100回選手権大会優勝予想

[予想][選手権]第100回選手権大会優勝予想

第100回に相応しく頂点を目指すに相応しいチームが多く出揃う大会となりました。

お恥ずかしながらまったく予想も付かない状態にありますが、希望的観測を多めに込めた優勝予想をさせて頂きます。

優勝予想

大阪桐蔭
前橋育英
▲その他多数

大阪桐蔭

やはり触れずはいかない大阪大会準決勝の対履正社戦。

9回2死走者無しまで追い込まれた場面でカメラが捉えた大阪桐蔭ベンチには、悲壮感も過剰な気持ちの高ぶりも無く、いつもと変わらずただ次の1点をどう取るかに集中する選手たちの顔が映し出されていました。

そこからの宮崎、中川、藤原、根尾の連続四球。いずれの打者も見るべき球は見極める、打つべき球はしっかり振り切る、そういったやるべきことを当たり前のようにこなした結果の同点劇でした。これまで積み上げてきた大きなものがあと1アウトで全て終わってしまう、あの崖っぷちの場面で・・・。

一体どれだけの地獄を見てきたらあれだけの精神力が培われるんだろうか?

そんな時に頭をよぎるのは昨夏の仙台育英戦。信じられないような一つのミスが引き金となったあの衝撃的な敗戦は、このチームにいついかなる時でも常に最高のパフォーマンスを発揮できる鉄の意志を与えました。

過去の春夏連覇校と比べてスケール感では見劣りする印象もありますが、頂点を目指すチームがまとうオーラという点では高校野球のチームが達しうるおおよそ最高地点に到達しており、本当に強いチームが苦難を乗り越えて栄冠をつかむという第100回のストーリーにも相応しいチームだと思います。

個人的に一つ願わくば、その時最後のマウンドには柿木を立たせてあげて欲しいのですが、さてどうなるのでしょうか。

前橋育英

春季関東大会優勝と最強打線の看板を引っさげて出場していれば優勝候補の一角にもなっていたであろう健大高崎を、持ち前の粘り腰で見事にうっちゃった前橋育英。「凡事徹底」の言葉通り守りから試合を作っていく野球スタイルで地味な存在ですが、どのチームを相手にしてもいい勝負に持ち込める十分な地力に要注意です。

エース恩田は上背位こそないもののキレのあるボールとスタミナを備え、スマートなマウンド捌きも好感の持てる好投手です。また守りが中心とは言いつつ、一発長打もしっかり出るし、ここぞでの勝負強さもある打線の方もなかなか見るべきものがあります。

個の力が目立った昨年のチームより、総合力で勝負できる今年の戦力の方が荒井野球にははまりそうで、高橋光成で初出場初優勝した時と似た雰囲気を醸し出しています。

健大高崎の分まで、大きな成果を目指して欲しいところです。

その他多数

その他、気になる学校が多すぎて絞るのもコメントするのも大変なので省略させて頂きます・・・。

あえて数校挙げると花巻東、明石商、創成館あたりは特に気になりますが、他にもどのチームが活躍しても驚きもしないし、おかしくもないだろうと思います。